声の手術
声帯注射・声帯内挿入術(外来日帰り 局所麻酔)
声帯注入療法に使用される薬剤
ステロイド、ボツリヌストキシン、ヒアルロン酸、コラーゲン、トラフェルミン など
声帯注入の方法
・病態の診断を確認し、治療の説明を行います。
・外来日帰り・局所麻酔での手術が可能です。入念な表面麻酔のあと、施術時間は数分程度で終了します。
・声帯はとてもデリケートなので、注入薬のご提案や注射の量には細心の注意を払っています。
①スプレーとガーゼ挿入により鼻内の表面麻酔を行います。
②鼻から内視鏡を挿入したうえで、直接声帯を表面麻酔します。
③頸部から極細針を刺入する場合は、頸部皮膚にも少量の麻酔をします。
④注入方法は図のように目的に応じて3パターンありますが、麻酔をしたうえで注射を行うため、痛みは少なく、頸部の切開も必要ありません。
声帯注射の効果
注入した薬剤や量よって異なりますので、個々の病態により効き方や効果期間、注意点などをご説明をいたします。お仕事で声を使用されている方には、お仕事のスケジュールなどを相談してから行います。
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- 声帯注射
内視鏡下で声帯に直接注射をします。症状により、注入する薬を変えます。 - 費用: 約¥30,000(保険3割負担)
- 声帯注射
どんな症状に、どの薬剤を使用するか?
【慢性声帯炎の症状】
・声の使用が多く、声がれが治らない・消炎剤やステロイドの内服でも、すぐに腫れてしまう
・かぜなどの何らかの炎症を契機に、治らない声がれ
→慢性声帯炎により悪循環に陥っている可能性があります。
腫れた声帯のままで無理に声を使い続けることで、声帯に負荷が強くかかって余計に腫れやすくなります。
【治療】ステロイドの声帯注入療法
【声帯萎縮・声帯麻痺の症状】
・加齢により以前の声が出なくなった・声が抜ける、息もれ声で弱々しくなった
・しっかり声を出そうとすると、詰まるようになった
・長く話すほど、声が嗄れてくる
・大きい声が出しにくくなった
→声帯が痩せて萎縮していたり、麻痺しているなどの可能性があります。
声帯が微妙に閉まらないために、声の抜け・詰まり・震えの原因になっていることがあります。他院で異常がないとされた場合でも、当院での精査により診断いたします。
【治療】ヒアルロン酸、コラーゲン、トラフェルミンなどの声帯注入療法
注入物の効果や持続期間はそれぞれ異なるため、状態に合わせたご提案をいたします。
※その他の手術:甲状軟骨形成術、声帯内自家脂肪注入術
【過緊張発声の症状】
・声帯の形や運動には異常ないが、声が詰まる・とぎれる・ふるえる・音声治療をしたが、効果が出にくく良くならない
→原因不明ですが、痙攣性発声障害の可能性があります。
声帯筋が過剰に収縮しすぎているとされ、筋肉を麻痺させることで声の調整を改善させます。その結果、話し声の詰まりやふるえを改善させます。
【治療】ボツリヌストキシン(ボツリヌス毒素)声帯注入療法
声帯ポリープ切除
声帯ポリープとは?
広い意味:様々な声帯にできた出っ張った病変の総称です。
狭い意味:声帯表面の内出血によってできた隆起病変のことです。
声帯ポリープ切除術とは?
・様々な声帯病変(ポリープ・のう胞・結節・腫瘍など)を取り除く手術.
・声帯を平らでなだらかな元の状態にし、声を改善に導くことが目的です.
・切除した病変を病理検査して、悪性でないかなど、病変診断も行います.
・基本的にのどの中から手術を行うため、体の外側に傷がつくことはありません.
手術方法にはどんなものがありますか?
以下のように、大きく分けて二通りあります。
手術時間は麻酔時間も含めて1時間程度です。
1.全身麻酔で行うときの特徴
手術室で顕微鏡で声帯を覗きながら、拡大視野で病変を0.1㎜単位で操作します。そのため、喉頭微細手術(のどの細かい手術)と呼ばれています。
日帰りできる施設(豊村耳鼻咽喉科 音声・聴覚メディカルケア)にて、院長が手術を行えます。一般的には入院が必要です。
【長所】
局所麻酔よりも、圧倒的に正確に手術を行えます。
難しい病変にも対応できます。
【短所】
全身麻酔の費用がかかります。
日帰りもできますが、入院希望の場合には入院費がかかります。
2.局所麻酔で行うときの特徴
診察室の椅子に座ったまま外来で行います。
声帯が静止することはなく、呼吸や咳などの偶発的な動きが伴うため、どんな名手が行っても完璧な手術というのは困難です。
鼻内・声帯の表面麻酔→必要時、頸部から極細針を刺入しポリープ切開→内視鏡鉗子を用いてポリープを摘出します。
【長所】
他のご病気のために、全身麻酔をできない方でも施行可能。
全身麻酔の費用が要らない、術前検査も簡易で済む。
【短所】
全身麻酔よりも手術精度が落ちます。(呼吸などで動いている声帯に操作を加えるため)
難しい病変や、歌唱のように繊細な音声使用をされる方には、全身麻酔での微細手術をお薦めしています。
喉頭形成術
喉頭形成術とは?
・喉頭のなかに声帯がありますが、その枠組である喉頭軟骨(甲状軟骨・輪状軟骨・披裂軟骨)を操作することで発声機能を改善する手術です。
・声帯表面には直接的に触りませんが、頸部を4㎝程度皮膚切開してから軟骨を操作します。
・術式は大別して、甲状軟骨形成術Ⅰ型~Ⅳ型と披裂軟骨内転術があります。これらを組み合わせることがあります(費用は変わりません)。
・基本的な麻酔は局所麻酔が中心で、発声状態をモニタリングし、微調整しながら行います。
Ⅰ型
声帯麻痺、声帯萎縮など(声帯を閉じやすくする)
Ⅱ型
痙攣性発声障害(声のつまりをとる)
Ⅲ型
変声障害、高音化障害(話し声を低くする)
Ⅳ型
低音化障害(話し声を高くする)
披裂軟骨内転術
声帯麻痺(麻痺して閉じなくなってしまった片側の声帯を閉じた状態に固定する)
その他、外傷性の喉頭骨折などに対しては、骨折部位を整復固定したり、これらを組み合わせる場合があります。
披裂軟骨内転術
この手術は、反回神経麻痺により「声がかれる」、「息が漏れて声が長く続かない」、「むせる」などの症状に対し、発声時に声帯が閉鎖しやすい形態に喉頭を形成することで発声のしやすさを改善することを目的として施行します。
局所麻酔で声を聴きながら、頚部を数センチ切開して、麻痺により動かなくなった声帯を発声・嚥下時の位置に移動させる手術です。手術時間は2-3時間です。
声帯内筋切除術
声帯内筋切除術は、発声時に声帯が不随意的、断続的に強く内転することに着目し、声帯筋(甲状披裂筋)を可能な限り摘出する方法です。
全身麻酔下に喉頭直達鏡下で行うため頸部の切開は不要です。術後3か月程は、瘢痕・萎縮による嗄声が続きますが、その後はほぼ正常に近い声まで改善していきます。
その他の手術
声帯病変の他に、鼻や咽頭に対する手術を行うことができます。 外来にて診察時にご相談下さい。
・アレルギー性鼻炎に対する鼻閉改善術
・上咽頭病変に対する切除術
・鼓膜切開術 など
手術・リハビリ実績
2019年以降の初診患者数・手術などの実績は下記の通りです。2024年より3名の音声専門の言語聴覚士が音声治療(声のリハビリ)を担当しています。
患者様のニーズに合った手術・リハビリの提案をさせて頂いております。喉頭筋電図検査は年間50例以上行っております。